そう思っていたけれど…

前回の続き。

昔、読んである種の憧れを感じた本を読み返してみました。
内容はかなりざっくり言うと、相性の悪い夫婦がいて別れたらよさそうなものなのに何だかんだと別れないと言う話。
特にこれと言ってひどく憎いこともないけれどすっかり破綻している夫婦、妻は外に男性がいて夫も公認であったり、
夫もいかがわしい店に通っていたり、友人にそんなことなら別れたらいいと言われたらのらりくらりしたり…最後に妻の父に夫婦のことがバレてとうとう話し合わないといけない局面になって…というところで話は終わります。

子供のころはなんだかんだと理由をつけてはうだうだする夫婦の描写を見て大人っぽいなと、これってなんかかっこいいことなんだろうと感じていたんじゃないかと思います。
大人になって読み返してみた感想は、
なんだか割と普通な夫婦の姿が美しい文章と描写で描かれていました。
夫婦が芝居を観に行くくだりなんかは本当に情景がリアルに思い浮かぶような美しさで感動だなと、この印象だけでもかなり素敵な話だったと記憶に残りそうだなと感じました。
なんだか美しい宝石箱に夜店の指輪を入れてあるみたいに、静寂の中に躍動感が同居しているような不思議な感じでした。

でも、結婚している友人達は多かれ少なかれみんなこの話になんとなく重なるような話をしているのできっととっても普通の話なんだろうなぁと思いました。
で、時代は変わっていくもの、あくまで女性が嫁に行き家庭にはいる、それがある程度普通な時代の価値観の中でのみありきたりな話なのかもしれないと思います。

またあれこれ考えては決断が難しくなるのは大人な特徴だから子供の私は大人っぽい香りを感じたのかもしれません。
主人公があれこれ考えたりしているのも、ある意味とても善人らしかったりして描き方の絶妙さを感じます。

ちょっとしたお休みに大人が力を抜いて読むのにぴったりなそんなお話でした。
このお話の作品は

谷崎潤一郎作 蓼食う虫

です。興味が湧いた方は読んでみてください。
きっとあなたなりの発見がある、そんな一冊だと思います。